信州・安曇野、おいしい13ヶ月
私達が信州・安曇野に根を下ろして早10数年、季節のうつろう姿は毎年様々で、ある作物が豊かな年は、ある作物が不作となったり、台風の到来も必ずしも悪いことばかりではなかったり、自然相手の生活はいろいろ教わることばかりです。
私達は四季折々美しく豊かな自然に囲まれ、水や食べ物、そして澄んだ空気がことのほか美味しい安曇野が大好きです。
そしてノーサイドのお料理はこの信州・安曇野の水や食材がなくては成り立ちません。ゲストの方から「お料理はフレンチですか?イタリアンですか?」といったご質問をしばしば受けるので、少し詳しくご説明させていただきます。
私達がご提供するのは、和食と洋食、それぞれの長所を取り入れた安曇野の郷土料理です。洋食のコース形式をとっているのは、和食のように食器を多用した華美な飾り付けが少なく、合理的なことが理由で、盛りつけも、見た目の豪華さより食べやすさを優先し、ゆったりとお食事が楽しめるようにしています。
内容的には、バターやクリーム・オイルをできるだけ控えて、素材の味を大切にする和食の手法を数多く取り入れ、魚・肉・野菜・果物をバランス良く組み合わせ、特に野菜の分量には気をつけています。私達もときどき体験することなのですが、せっかく疲れを癒しに旅行したのに、野菜不足で体調を崩しては、楽しさも半減してしまうからです。
そして年を重ね、気候・風土への理解が深まってきたころから、料理の内容は素材の味をより多く生かすようになっていき、同時にゲストの方々からいただくお褒めの言葉も増えていきました。今までで一番嬉しかったのが「いつもは和食党で、洋食は油っぽいと思って敬遠していたけれど、こういう料理もいいものですね」と言われたときです。
しかし、あるときふと気づいたのです。「この賛辞は本来、私達に向けられるものではなく、食材を目利きして提供してくれる人々、さらには彼らのめがねにかなった食材の生産者の人達に向けられるべきではないのか」と。
そこで、ノーサイドのテーブルを彩る豊かな食材とそれらに係わる愉快な人々の話を、季節の風景などを織り交ぜながら、皆様にご紹介したいと思います。
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