* 10月 紅葉はワインのごとく 10月の声と共に、多くのゲストから「紅葉はいつ頃が一番良いですか?」という難問が私達に寄せられる。そこでこの機会に、難問にお答えしたいと思う。 10月上旬は、紅、黄、緑がほどよく調和し、それは若さの中に大人びた雰囲気が芽生え始めた女性のようであり、明るい紅色のヌーボーワインである。 つまり、「どれも素晴らしく、あとはそれぞれの好みに依る」というのが正解である。そして、さらにいえば、私達は好天の紅葉にはそれほど感動しない。(贅沢といえばそれまでだが・・・)なぜなら好天の紅葉は、カレンダーや絵はがきそのままの姿であまり面白くないからだ。 「お天気が良くないと出かける気がしない」という人もいるが、山の気候は、とても変わりやすく、特に秋は、降るといっては晴れ、晴れるといっては降ることが多い。 秋の日はつるべ落とし、というように、この時期は5時を過ぎると周囲は暗く、寒くなり、ぱちぱちと暖炉で薪のはぜる音が恋しい季節になる。 そして、秋といえば、何といっても果物である。M青果の店頭には果物が所狭しとひしめき合い、りんごだけでも、王林、秋映え、陽光、千秋、紅玉、ジョナゴールドなど、次から次へとめまぐるしく種類が変わる。 さらに、葡萄の中で忘れてはいけないのがナイヤガラだ。マスカットより一回り小粒の姿だが、独特の甘みと香りはゲストの間でも人気が高く、お土産の要望が多い。しかし、この品種は実落ちが早く、宅急便で取り扱わない品目なのが残念である。 葡萄といえば、ある年、M青果のM夫人が「巨峰の実がバラバラになったんで何かに使って」と沢山くれたことがあった。完熟した巨峰をふんだんに使って、ケーキ・タルト・シャーベットを作ってみたところ、その贅沢なおいしさが忘れられず、翌年は熟した巨峰を購入してまで作る羽目になってしまった。 その他、柿や栗、めまぐるしいばかりに多い品種のりんごなど、食べる方が追いつかない。秋の安曇野はお腹も大忙しだ。
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