信州、安曇野の宿、穂高、くつろげる、紅葉、四季折々、旅物語、メインディッシュ



* 安曇野秋の旅 *




 色とりどりの紅葉にまばゆい光がきらめく秋の朝、ノーサイドを車で出発すること30分、車を降りた幹子さんは思わず「きれーい・・・」と歓声をあげ、そのまま息を飲んでいました。
「錦織なす、とはまさにこのことだね。」

「今まで10月の終わりや11月頃金色の落葉松は見たことがあるけれど紅葉の一番鮮やかなこの時期は初めてだもの。オーナーおすすめの高瀬渓谷にようやく来られたわね」
「いつか来たいと思っていたけど10月は仕事や行事が多くて、結構忙しかったからね。」
「お互い夏休みを取り損ねて今頃になったのが幸いしたわね。」

 2人は日頃の運動不足を解消するため、竜神湖のほとりをゆっくり散策しながら、秋の山々の鮮やかな彩りを満喫しました。
「あー疲れた。暗くならないうちにノーサイドに帰って早く温泉に浸かりたい。」と博さん。
「忙しくて運動不足ね。おなかもすいたし、帰りましょう。今日のお昼は果物とパンとアルプスの名水だけだったものね。」

「君が朝食はきちんと食べられるから、お昼は軽めにしようといったのでまかせたけど、いくらなんでも軽すぎないか?」
「少し身体を絞った方が良いと思ったのよ。シンプルで健康的でしょ?」
「シンプルすぎたけど、林檎に柿にブドウ、信州の実りを堪能したよ。きょうはしっかり汗をかいたから、風呂上がりにビールを飲んでから、ワインを楽しもう。信州鹿の燻製や生ハムも食べたいな。」

「せっかく運動したのに、誘惑しないで・・きょうのメニューはなにかしら。きのうはオーナーのおすすめで近くの小さなワイナリーのワインを飲んだけど、値段もリーズナブルでなかなか良かったわね。ノーサイドは長野県産でも、お店にはあまり売っていないワインがあるのでいつも楽しみだわ。」

「そうだね。その土地のワインはその土地で飲むのが一番だ。今度春先にワイン好きのK夫妻を誘って来ないか?」
「賛成」
「そうだ。赤ワインをあけておいてもらった方がいいかもしれない。さあ、車に乗って。秋の陽はつるべ落とし、ノーサイドは山の麓だから今の季節は5時には暗くなる。」
「はいはい。でも焦らずに運転してね。」

 車は高瀬渓谷を出発し、錦秋の山々、ずっしりとした紅色の実がたわわに実るりんご畑、金色に輝く稲の刈り入れなど、秋の安曇野を彩る風物詩の中を静かに走ります。
「昨日行った信州の北にある渓谷の紅葉も雄大で素晴らしかったけれど、安曇野の紅葉は、人の営みと自然とが融合して醸し出される和やかな風情よね。

そういえば何年か前、10月の終わり頃来たことがあったでしょう。その時朝早く外をみたら、霧がかかっていたの。その中で枯色に近くなった紅葉が幻想的に浮かび上がって、空の明るみにつれて表情を変える様子が、おもわず息を飲むほど見事な情景だったの。あの感動は今も忘れられないわ。」

「何だ、起こしてくれれば良かったのに・・」
「だって朝早かったし、ぐっすり眠っていたから・・またいつかみられるわよ。明日は紅葉巡りのしめくくりに満願寺に寄っていきましょうよ。」
「ノーサイドから歩いてか?」
「それはまた新緑のお楽しみ。小一時間かかるじゃない。でも満願寺はいつ訪れても、心洗われる場所よね。今回は信州の紅葉をたっぷり楽しめたから、また働く意欲がわいてきた。たまには思いっきり羽を伸ばさないと良い仕事はできないわね。」


「そうだよ。実はさっきからいろいろアイデアが浮かんでるんだ。「何もしない時間」というのは想像力の源だね。」
「あらもう仕事の話? でも元気で働けるって幸せよね。」
「そうそう。さあ着いた。平日は道路が申し訳ないくらいすいていて楽だな。」
「本当ね。宿でもゆったり過ごせるし。あら、煙突から煙がでてる。」
「暖炉とも今日でお別れだ。薪の火はいいよね。あのぱちぱちとはぜる音と炎の揺らぎは飽きることがないよ。」

 2人は夕暮れに浮かぶ色鮮やかな木々を前にしばし歩みをとめ、やがて温かな灯りのともるエントランスへと名残惜しげに向かいました。

<メインディッシュ>

ミートパイ・赤ワインソース
いろいろなお肉、茸、野菜が入った様々な風味のパイを、深い味わいの赤ワインとフルーツのソースがまとめ、こくがありながらもしつこさのない味わい。

人生の中で、最も充実して活気あふれる、実りの季節。




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